応用編−もっと製図を楽にするために−

寸法補助記号

 寸法補助記号は寸法数値につけ加える簡単な記号で、寸法の意味を明らかにするために用います。先ほど説明した「φ」も、寸法補助記号のひとつです。
区分 記号(呼び方) 用法
直      径
半      径
球 の 直 径
球 の 半 径
正 方 形 の辺
板 の 厚 さ
45°の面取り
φ
R

SR

t
C
(ま    る)
(あ  ー  る)
(え す ま る)
(えすあーる)
(か    く)
(て ぃ ー )
(し    ー)
寸法数値の前に、寸法数値と同じ大きさでかく。
円 弧 の 長 さ
(え ん  こ)
寸法数値の上にかく。
寸法補助記号を付けることによって、その部分の形状がわかるため、描かなければならない図の数を減らすことができます。ちなみにφの読み方は教科書には「まる」と書いてありますが、ロボ研ではなぜか「ぱい」と読むことが多いです。ギリシア語のアルファベットで「ぱい」といえば「π」のことで、φの読み方は「ふぁい」のハズですが・・・まあウチの慣習ですね。


 また、アングル、チャンネル、角パイプなどの部材を描く場合「10×10アングル」「15×20角パイ」等と表記することによって、断面形状の製図を省くことができます。ちなみにこの表記方法はロボ研特有のものですが、似たような表記方法が形鋼、鋼管等の製図の際に使われることがあります。下にロボ研で使えそうなものを挙げておきます。
種類 山形鋼(アングル) 溝形鋼(チャンネル)
表記方法 L A×B×t-L H×B×t1×t2-L
断面形状
種類 角鋼管(角パイ) 鋼管(パイプ)
表記方法 A×B×-L φA×-L
断面形状
種類 丸鋼(ムク棒) *L=長さ
表記方法 φA-L
断面形状

線・図形の省略
歯車やハブ、プーリーのように、図形が対称形の場合には、その図形の中心線(対称中心線)の片側の図形を省略することができます。
   
例えばこんな形のハブであれば・・・
こんな風に省略することができます。
この場合、図のように対称中心線の両端部に短い2本の平行細線(対称図示記号)をつけ、図形が対称形であることを示します。側面図、平面図でも同じです。


軸・棒・管・形鋼・ラック等、同一断面形の部分やテーパ部分等が長い場合、また同じ形が規則正しく並んでいる場合には、中間部分を切り取ってその肝要な部分だけを近づけて図示することができます。


切り取った端部は破断線(フリーハンドの細い波線)で示します。紛らわしくない場合は省略することもできますが、描いておいた方が無難です。それくらいの手間はかけましょう。
さっきのハブの穴も・・・
1ピッチだけ描いて他は中心線で示すことができます。

部材の製図、省略型
部材の側面図、それから一部の寸法を省略できることは既に述べました。しかし同じ形の部材を幾種類も製図していると面倒になってきます。特に時間が迫っているとき、部材の製図はかなり苦痛です。そこで、あまりお勧めはできませんが、前述の図をさらに略した図が使われることがあります。



前回の図からさらに平面図がなくなり、正面図のみで全てを表す形になりました。しかし、元の情報は失われていませんから、まだ「安全」な図面だといえるでしょう。



もっと省略しました。全長の記述がなくなり、また辺ごとに寸法線を分けて記入することをやめています。こうなると内側の穴をけがく時に10+5と計算しなければならなくなるので制作者の手間が増えます。この程度なら簡単に足し算できますが、穴の数が多くなると計算が面倒になり、ミスにもつながります。「やや危険」な図面です。
切羽詰まってくるとこんな感じになってきます。既に正面図すら描かなくなり、一本の線で部材を示しています。寸法線もありません。何の部材なのか図から判断できません。しかも足りないところを口で説明したりするので、ミスも多くなります。また、こうなると大抵フリーハンドなので、大きさの目安も付けづらくなります。「かなり危険」な状態です。


最終的にはこうです。既に図ではありません。メモだけです。人によってはさらにこれを口で伝えます。「末期状態」です。

制作者にとって図面は、実際に作るパーツに近ければ近いほど作りやすいので、略されない方がよいのです。しかし設計者にとっては、図の数が少ないほど楽です。どの程度までが許される範囲か、判断は人によって様々だと思います。ロボ研の中では「こうしなければならない」規則があるわけではありませんし、頭では分かっていても忙しかったり疲れて手が動かなかったり、という時もあるでしょう。
ただ、作ったパーツのデータは後で必要になることが多くあります。そんな時メモだけで作っているともう一度測定、計算のやり直しになり、かえって時間がかかります。また、原寸大の部品図があったほうがパーツを作った後図面に当ててみてサイズが正しいか大雑把に確認ができるなど、作業効率は格段に良いです。「急がば回れ」ということです。時間があるときは、面倒くさがらずにきちんと製図をしましょう。